統一されたモダンな街並みの
「すずらん街」
山形市中心部の繁華街として賑わいを生みだしてきた駅前エリアのなかでも特に「すずらん街」は、近年は若い世代を中心に多くの飲食店が新規出店している印象があります。
この「すずらん街」(正式には大手門通りすずらん商店街)の街並みは、よく見ると統一された端正なデザインの建物の連続になっていることにお気づきでしょうか? これは、今から60年ほど前にこの一帯が再開発された際に生まれた貴重な景観なのです。
「防火建築帯」とよばれ、1952(昭和27)年の耐火建築促進法制定から1961(昭和36)年の防災建築街区造成法制定までの間、全国84の都市で国からの補助も受け建設されたもの。震災と戦災を経て戦後急速にすすめられた都市の不燃化と市街地再開発の手段として、主に中心部の沿道商店街で実施されました。
すずらん街では戦後、人通りが多い割に道が狭いという従来からの問題をうけて道路拡幅を計画しており、それに伴う建物のセットバックを機に、商店街のおよそ8割を耐火建築化することとなりました。規模的には鉄筋コンクリート造3階建てが主で、その1~2階を店舗、2~3階を住居として使っています。区分所有法ができる以前であり、基本的に各自の土地所有境界をそのままに、建物を長屋形式に連続させて区分所有しています。
築60年という、そこまで古い建物でもないのですが、基本的には店舗でテナント貸ししているところも多いため、内外装は1階部分を中心に完成当時の原形をとどめていないところが多いようです。
オリジナルの共通点として、屋根は陸屋根(屋上テラス)、外壁はモルタル吹付仕上げ、開口部はスチールサッシ、横長窓の両側には戸袋のような突き出た壁、アーケードの名残の庇などがどの建物にも見てとれます。
(つづく)
photo:井上貴詞、那須ミノル