クルマなしでも楽しく暮らす
料理人 松田翔さん
山に囲まれた盆地のまち山形には、坂道だってもちろんあるし、電車やバスといった公共交通機関はけっして便利ではない(& 地下鉄なんかもちろんない)し、自転車にやさしい道路が多いわけでもない。
人びとが通勤してゆく企業は町のあらゆるところにあるし、工業地帯や流通団地や大型ショッピングセンターのたいていは町の中心部から遠く離れた郊外にある。そして、人びとが帰ってゆく住宅地は、山々の麓や中腹にまで広がっている。住宅や人びとの密集の具合が、都会とはぜんぜん違うのだ。土地は広い。ただただ、だだっ広い。
そんなこの町に暮らす人たちがよく口にするのは「山形はクルマ社会」だということ。
データで見ると、車の所有率は1世帯あたり約1.7台(※)。都道府県別での世帯あたりの保有台数では、福井・富山に次いで全国3位の数値となっている。つまり1家族に1台あるのはあたまりまえ。家族の人数分のクルマを所有している世帯すらたくさんあるらしい。通勤もクルマ、買い物もクルマ、遊びもクルマ、どこでもクルマ、80才になってもやっぱりまだクルマ、という人がこの町の主流なのはまちがいないだろう。
(※ 一般財団法人自動車検査登録情報協会 H28年情報より)
では、クルマがなければこの町で暮らしていくことは不可能なのだろうか?
このコーナーでは、山形に移住してきた人たちにフォーカスし、山形で毎日を暮らすということはどういうことなのか、クルマのない山形暮らしが可能なのか、やっぱりクルマは必要なのか、職場や住宅をどのように選ぶことが望ましいのか等インタビューしてみたい。これから山形への移住を考える人たちに向けて、ちょっとでも参考になるよう願いながら。
今回紹介するのは、料理人松田翔さんのリアルボイスです。
「ぼくと妻の住まいは、山形市宮町にある北山形駅から近いアパートです。家賃はだいたい4万5千円。この価格には駐車場1台分が付いています。ぼくらはクルマを持っていないのでその駐車スペースはまったくムダになっているんですが、山形のアパートには駐車場が最初からセットになって付いているところが多いみたいです。
ぼくは山形市中心部の飲食店で働いていて、妻もまた別の飲食店で働いています。アパートから職場まではだいたい3キロくらいの距離、自転車で15分程度というところですね。自転車も走りやすいくらいのほどよく大きな道路なので、通勤については比較的快適です。雨の日はカッパを着てやっぱり自転車に乗っていますね。たぶん、問題はこれからの冬の季節で、雪道になったらどうしようって思っています。それでも、クルマを買う予定は今のところないですけどね」
(つづく)