特集:地域をひらこう!/伊東 広さん
西川町 地域おこし協力隊員 /伝統工芸職人 / ゲストハウスオーナー
山形市と近隣の寒河江市、上山市、村山市、天童市、東根市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町、西川町、朝日町、大江町、大石田町を合わせた7市7町はひとつの大きなエリア「山形連携中枢都市圏」として互いに協調しながら、よりよい地域づくりを進めています。このシリーズでは、その山形連携中枢都市圏を形成するエリアで地域をおこす活動をされている方たちにフォーカスし、そこでどんな活動をされているのか、そこにはどんな魅力があるのか、お話を伺います。
今回ご紹介するのは、西川町で地域おこし協力隊として活動されている伊東広さん。世界30カ国以上を放浪したのち西川町大井沢地区に辿り着き、この地域に受け継がれてきた伝統的な手仕事を継承しようとされています。いったいそこにはどんな想いがあるのか、お聞きしました。
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伊東さん:西川町のこの大井沢地区にきて感銘を受けたのは、この地域に根付いてきた「ものづくり」です。山葡萄のツルで編まれたカゴや、わら細工や、「かんじき」や「ときと」と呼ばれる民具などといった手仕事によるものです。でも、その一方で目の当たりにしたのは、そういう素晴らしい技を受け継いできた世代の人たちがいまでは後継者不在のままどんどん引退していっているという事実でした。地域に育まれてきたこうした文化が途切れようとしている危機的なこの状況を逆にチャンスだと受け止めることにして、地元でそういう技を持っている師匠たちを訪ねては教えを乞うて、その技を学ぶということを積み重ねてきました。
これらのカゴや細工や民具というのは、もちろんモノとしても素晴らしいのですが、それ以上にその背景にあるものがとても好きなんです。というのも、この大井沢という地域は本当にすごい豪雪地帯で、冬ともなればゆうに3メートルは雪が積もりますから、ここの人たちは何ヶ月にもわたって閉ざされた生活をしなければならなかったわけです。そんな状況のなかでの収入源としてもそういう手仕事が発達していった…。その生活力というか、生活の知恵というものはとても人間らしいものだと思うんですね。ぼくがこれまで世界を転々として様々な旅を続けてきたのも、そういう暮らしに憧れていたから、でもあったんです。ですから、この大井沢の地でそういう暮らしに出会えたということにはとても運命的なものも感じました。その意味で、ただ「ものづくりがしたい」というよりも、この雪深い大井沢でこそこれをやる意味があるんだと思っています。
ぼくが編んだ山葡萄のカゴは、西川町のふるさと納税品として採用していただいていますし、昨年は東京や名古屋で展示するという機会にも恵まれました。師匠たちからも少しずつ評価してもらっていると思います。これからも、このものづくりを継続していって、町内、町外、そして県外へと情報発信し、この素晴らしい伝統の技を西川町の強みとして認知してもらえるよう、活動していきたいと思っています。
それから、もうひとつ、ぼくのミッションとして「宿泊」をやりたいと思っています。昨秋から築112年の古民家を改修してきてつい最近旅館業の許可を取得しました。この大井沢はもともと宿坊として栄えてきたという歴史がありますし、いまでも登山や川釣りなどで人が訪れますから、そうした人たちの受け入れができる宿の後継者にもなりたいと思っているんです。これらはもちろん地域のためでもあるんですけど、自分がやりたいからやっているだけ、でもあるんですよ。
Instagram「伊東広 / KOGUMA」
https://www.instagram.com/1tohirosh1/
(写真)伊東広さん。西川町大井沢地区の景色の中で。